「子どもの頃の自分」に寄り添うことの大切さ~羽生結弦選手の会見から感じたこと

先日、北京オリンピックで男子シングルの個人戦を終えた羽生結弦選手が、会見をされていましたね。

報道でも大きく取り上げられ、その後TVのインタビューにも応えていらっしゃいましたので、ご覧になった方も多いかと思います。

皆さんご承知の通り、羽生選手は今回前人未到の4A(クワッドアクセル、4回転半ジャンプ)に挑み、惜しくも成功とはならなかったまでも、国際大会で初の認定を受けました。

彼はそのジャンプを「9歳の自分と一緒に跳んだ」と仰っていて、

私は普段年齢退行療法(=インナーチャイルドセラピー)をさせていただいている者として、その言葉に感銘を受けました。

彼は心の中の子どもの頃の自分=インナーチャイルドにずっと寄り添ってきて、これ以上ない方法でその子を癒すことができたのだとわかったからです。

今回は、羽生選手の言葉をお借りしながら、子供の頃の自分に寄り添うことの大切さについてお話ししてみますね。

インナーチャイルドとは

インナーチャイルドとは先述したとおり、「自分の心の内側にいる子どもの自分」のことです。

大人になっても変わらずに続いている思考パターンや習慣などをさす言葉であり、また、子ども時代の辛い・悲しい体験によって生まれた「傷ついたこどもの心」をさす言葉でもあります。

子どもの頃に抱いていた夢や、子どもの頃に好きだった・やりたかったという思いは、インナーチャイルドが抱いている思いなんですね。

でも、人は大人になるにつれて、そういう思いを忘れがちになることがあります。うまくいかないことが重なって、自分にはできないんだと諦めたり、人から馬鹿にされるのを恐れてやめてしまったり、他のことを優先して後回しにしてしまったり。時間や経済的なゆとりがなくてやりたくてもできないということもあるかもしれません。

どのような理由にせよ、インナーチャイルドの思いを叶えてあげずにいると、その子は満たされない思いを抱え続けたままなので、大人の自分にも影響を与えることになります。

人生の目的とのつながり

そもそも人は、生まれる前にガイドたちと相談して、おおまかな人生の計画を立ててから生まれてきます。旅行に行く前に計画を立てるのと同じように、あれを体験したい、これも体験したいと、この人生でやりたいこと、つまり人生の目的を決めてから生まれてくるのですね。

生まれるとその計画は忘れてしまうのですが、子どもの頃はまだ生まれる前の世界と近く純粋ですので、人生の目的を何となく覚えています。ですから、子どもの頃の夢や、子どもの頃に好きだったこと・やりたかったことというのは、人生の目的とつながっている可能性が高いんです。

人生の目的の一部なのに、もし体験しないまま人生を終えてしまったら…それは残念ですよね。もしあなたが、人生に対して物足りなさや満たされない思いを感じていたり、あるいは自信や自己肯定感を感じられなかったりしているならば、それは「まだやり残してあることがあるよ」というインナーチャイルドからのメッセージなのかもしれません。

インナーチャイルドを癒せば自分が満たされる

さて、このことを羽生結弦選手の生き様から考えてみましょう。

オリンピック二連覇と4Aの成功は、9歳の子どもの頃に彼が抱いた夢でした。二連覇の方は、ソチと平昌で達成することができたので、残る4A成功の夢を叶えようと、この4年間努力を続けてきたのです。

もともと彼はアクセルジャンプが得意ですので、4Aもすぐにできると最初は思っていたそうですが、予想以上の難しさで「氷に体を打ち付けて死にに行くような」練習をずっとしてきたそうです。3A(トリプルアクセル、三回転半)と4Aでは、技術がまったく違っていたそうなんです。

コロナ禍で練習拠点のカナダに行けず、コーチとはリモートでやりとりできるだけ。夜中に一人で孤独な練習を続けてきて、ようやく試合で挑めるレベルにまで到達し、昨年末の全日本選手権で初めて試合でチャレンジしました。成功はせず3Aと判定されましたが、優勝してオリンピック代表権を勝ち取りました。

そして、「4Aを成功させて三連覇」という目標を掲げて北京オリンピックに挑みました。ショートプログラムではリンクの穴にはまり、フリープログラムの前日練習では右足首を捻挫して「うまくいかなかったことしかなかった」そうですが、それでも彼はフリープログラム本番で4Aに挑みました。

彼は会見で、「僕の心の中に9歳の自分がいて、あいつがずっと跳べって言っていた」と仰っていました。ずっと「お前へたくそだな」と言われながら練習していたそうです。

9歳の自分=インナーチャイルドですね。彼は、インナーチャイルドの声を無視せず、諦めず、ずっと寄り添い続けてきたのでしょう。

4Aは、三連覇を達成するためならば、敢えて挑戦しなくてもいいジャンプなのです。彼には4ルッツも4ループもあります。既にできるジャンプを組み合わせて基礎点を上げて、彼の持つ高い演技構成点とGOE(出来栄え点)をもってすれば、十分に金メダルを狙えたはずなのです。でも、彼はそうしませんでした。あくまでも、9歳の自分の夢を叶えることに重きを置いて、それを達成した上での三連覇を目指したのです。

オリンピックというアスリートにとって最高の舞台で、他の選択肢には目もくれず、また怪我もあったにもかかわらず、9歳の自分に寄り添う選択をした。それは、9歳の自分から見たらどうでしょう。これ以上ないほどに尊重されて、とても嬉しかったのではないでしょうか。「ここまでしてくれるのか。やってくれるじゃないか」と。

羽生選手ご自身も会見の中で、9歳の自分に「褒めてもらえた」と仰っていました。4A挑戦の難しさを壁に例えて、「いろいろな方に手を差し伸べてもらって壁をのぼってこられた。でも、最後に壁の上で手を伸ばしていたのは9歳の俺自身」で、「最後にそいつの手を取って一緒にのぼった」という感触があったと。

9歳の自分にずっと寄り添い続け、最大限の努力をしてきたからこそ、9歳の彼もそれを認めて、壁の上から手を差し伸べた。見事に2人の彼が融合した、インナーチャイルドが癒された瞬間だったのではないかと思います。

結果としては、4Aは認定されたものの成功とはならず、メダルにも届きませんでした。「報われない努力だった」と彼は仰っていましたが、それは決してネガティブな発言ではなかったはずです。「やりきった」「誇れるアクセルだった」と、満足感を口にされていましたから。

必要なツールは既に持っている

また、確かTVのインタビューだったと思うのですが、羽生選手はこんなことも仰ってました。

9歳の自分は4Aの跳び方を知っていた。3Aを習得する過程でそれを忘れてしまっていたけれど、4Aを追求する中で最終的に辿り着いたのは9歳の頃のアクセルだった、と。

この言葉も、とても興味深かったです。なぜなら、人は生まれる前に決めた人生の計画を実行するために必要なツールは、必ず持って生まれてきているはずだからです。

だって、大事な大事な人生の目的ですよ。そのために生まれてきているんですよ。それなのに、必要な道具を忘れてくるはずがないんです。

ただ、後になって気づいたり、忘れていて思い出したりということはあります。気づくまでの過程や思い出すまでの過程も、人生の計画の一部なんですね。

人生の目的に沿って生き、自分を満たすために

今回、羽生選手がご自身の内面を率直に語って下さったおかげで、インナーチャイルドにしっかりと寄り添って癒すことの大切さを改めて感じさせていただけました。

成功するかどうかは関係ないんです。夢の大きさや、他人に賞賛されるかどうかも関係なく、ただ自分をどれだけ満たしてあげられるかが大切なんだと思います。

私のセッションを受けにいらっしゃる方の中には、「自分のやりたいことがわからない」「自分には何が合っているのかわからない」と仰る方も多いのですが、

もしあなたもそうなら、子どもの頃の夢や、子どもの頃に好きだったこと、やりたかったことを思い出してみて下さいね。それが、あなたの人生の目的に繋がることであり、あなたを満たすことなのですから。










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